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暮らしの場として

高森町役場から車で4分。根子岳、高岳を望む高森町色見地区に社会福祉法人 立正福祉会障がい者支援施設『高森寮』はあります。
設立は昭和52年、熊本市川尻町にある法宣寺(日蓮宗)住職川口泰量氏が、若いころ阿蘇郡高森町にある本成寺の住職として家族とともに移り住んだことが縁で、知的障がい者入所更生施設『高森寮』を開設、現在は施設入所支援定員40名、生活介護定員48名、短期入所定員4名にて運営されています。

高森寮では、利用している方々の「暮らしの場」であることを大切にしており、障がいの内容だけでなく皆さんの年齢の違いや考え方を尊重しています。できるだけその人に寄り添った日課を提供。整髪は地域の好みの理容店を利用し、週に一回は買い物に出かけます。夕食後はテレビを見たり、お茶やコーヒーを楽しんだり、外を散歩したりと思い思いに過ごすことができます。

約17年前に建て替えられた建物は、コンクリート造り、平屋建て、周囲の風景に馴染むモダンな印象であり、「施設的な建物は作らない」との手島施設長の想いが存分に反映されている素晴らしい雰囲気の建築です。プライバシーを尊重した部屋の配置、光を取り込む大きな窓、開放感のある高い天井、利用している人にとって「暮らしやすい環境」を整えています。

施設内から望める自然豊かな四季折々の景色も魅力の一つです。空気が澄んで心地よく、利用者さんの毎日の日課である、敷地内を一周する歩行コースを歩いていると四季折々の阿蘇の自然を肌で感じることができます。

高森寮 施設長 手島清士
施設名 障がい者支援施設 高森寮
所在地 〒869-1603 熊本県阿蘇郡高森町色見822
開設年月日 昭和52年5月1日(平成19年8月改築)
ホームページ https://takamoriryo.jp/

施設を社会化するために

障がい者の親でもあった創設者の川口氏は、「人として尊重され、自由でのびのびとした人生を送ってほしい」との強い思いがありました。そのような生き方を想像するなかで、“施設生活のなかにその人なりの暮らしが保障されているかが問われている”という考え方に行きつきました。
「施設を社会化する」ことを大切にし、利用者が人間らしい、基本的な暮らしを取り戻すことを目指しています。暮らし(働くことも含む)のなかでこそ人は学び、人格が形成されると考えられ、こうした学びや人格の形成は職員の支援からも得られるという。
高森寮では建物に外鍵はつけず、いつでも(夜間であっても)外にでることができ、外出・散歩も自由です。外に出ることを日常にすることを大切にし、ドライブや買い物もコンスタントに行っています。

毎日の歩行では集団の歩行は基本的に無く、一人ひとりの歩き方を認めた単独歩行に心がけており、歩かされるではなく自らの意志で自らのペースで歩くことで自己肯定感や自己認識を高めることにつながっていると考えられています。

私物も持ち込み自由で、食事に関してはできるだけ自分で行うことを大切にしています。ご飯もお変わり自由で、基本的欲求を満たすことを目的とし、制限はしません。食に対して満たされていることが、心の安定につながり、結果として肥満の方はいないそうです。

また、掃き掃除ができる人は掃除を、洗濯たたみができる人は衣類の整理を、後で職員の手直しが必要になりますが、日々の暮らしに少しでもかかわっていくことで暮らしを意識できるとのこと。

充実した日々

午前は主に歩行時間、午後の活動としてクッキング、カラオケ大会、ボール運動、体操などが行われます。また全館Wi-Fi環境を整えているので興味がありそうなユーチューブ動画鑑賞や、月に1回外部講師による「生け花」も人気で、生け花は居室やホールに飾ってあります。夕食後の時間は利用者が自分らしく過ごせる時間として位置付けてあり、特別な余暇活動の時間は設けていないという。ホールにはコーヒーやお茶が自由に飲めるようにサーバーが設置してあります。

コーヒーなどの飲み物や嗜好品、カップラーメン等の購入は認めてあり、自分で管理されている利用者もいるという。生活必需品の購入や嗜好品の購入は生活の一部として考え、月に2回は買い物を体験が行われます。コロナ感染やインフルエンザがいまだ流行しているなかではありますが、一部の方は高森町に出かけての買い物、その他の方はローソンさんの移動販売をお願いし、高森寮に来てもらい商品を並べていただき、利用者さんが自由に商品を選択し購入しています。自分の意志で物を購入する楽しさだけでなくこれも暮らしの体験の一つと位置付けています。

生活スキルの獲得も大切ですが、施設生活のなかでその人の自由な行動や自由な意志を最大限尊重することによってその人らしさは育つとの考えから、利用者の年齢も障がいの内容も異なる人たちを職員が決めた日課をあてはめることはできるだけしないようにしているという。午後の日課は対象となる人のみで、その他の人は職員が個別対応を行います。

就労支援にも力をいれており、平成元年から始まった養鶏は高森寮の特徴の一つです。

“平飼い”でのびのびと育てられた鶏から生み落とされる有精卵(1個50円)を地元に販売しています。1日平均千個生産。障がい理解の促進が目的なので基本的に業者さんへはおろしておらず予約いただいたお客さんへの直販にこだわっています。

今後の展開、大切にしていきたいこと

創設以来、地域の理解を得ながら運営されてきた高森寮。令和6年度、法人の公益事業として小学生・中学生を対象にした日本財団の「第三の居場所事業」及び子ども食堂を計画しています。高森小学校の近くに新たに建物を建設し事業を開始する予定で、親御さんが帰るまでの間、本を読んだり、宿題をしたりして過ごせる場所を提供します。満足な食事が摂れていない子どもが3割近くいるとの報道もあり、食育の場としても活用したいと考えられています。

福祉人材の確保や育成にも、力をいれています。令和6年3月には、二棟目の職員住宅が完成する予定で、Wi-Fi、家具や家電(テレビ・冷蔵庫・レンジ・洗濯機)、冷暖房が完備してあり、スタッフが住み込みで仕事に集中できる贅沢な環境が整備されています。20代の若者等で一棟目の職員住宅は既に埋まっています。

「この先、時代はどんどん変わっていく。時代に沿って、時代にあわせて、自分で考えるように職員には教えています。私がやってきたことを今後の人材には押し付けない。」そうおっしゃる施設長の方針が着実に形となってきており、高森寮の今後の展開がますます楽しみです。

〒860-0842 熊本市中央区南千反畑町3番7号 熊本県総合福祉センター内

TEL 096-324-5462 TEL 096-355-5440